発酵式二酸化炭素添加装置はどれくらいコスパが良い?ベストな砂糖の量は?色々と計算してみました。
最近、気になっているのがアクアリウム用のペットボトルで作れる発酵式CO2添加装置です。簡単に作れて二酸化炭素を水槽に添加でき、作り方もネットに数多く掲載されているので自分も作って実践中ですが入れる砂糖の量の最適解がわかりません。また具体的なコストパフォーマンスもよくわかってません。
しかし発酵によって出る炭酸ガスの量がわかればベストな砂糖の量とコスパの理論値は計算できるはず。ということで実際に計算してみました。
化学は大丈夫ですが、生物は中学生までしか履修していない素人知識なので間違いもあるかもしれませんが、ご容赦ください。また、今回紹介する分量ではまだ作ってないので、参考にされる場合は自己責任でお願いします。
まずは市販のボンベ式CO2添加の維持費を計算しました。結果が以下の表です。
標準状態のCO2を1L発生させるのに約11円かかる計算です。ボンベの価格はチャームで販売していたLeafのボンベを採用しました。ざっくり74g入り500円くらいが相場みたいなので大きな差異はないと思います。また厳密には封入されたCO2が全て使いきれるわけではないと思いますが、大まかな計算なので十分だと思います。
次に発酵式CO2添加装置のコストパフォーマンスを算出してみます。
発酵式CO2添加装置はペットボトルに砂糖と適当にイースト菌を入れるだけの簡単な構造です。イースト菌が砂糖を分解し、CO2とアルコールを作り出します。
ペットボトルに穴を開けて、それと水槽をエアチューブなどでつなぎます。発生したガスが出てくるので、エアーストーンなどで細かくして発生したCO2を水中に添加します。途中に100均などで売っている逆流防止弁をかますと良いです。
穴あけ部とホースの間の隙間のシールが結構大事です。自分はシールテープをエアーホースに巻いて、上から適当なシール材で固めています。
まず、コスパを計算するために、入れた砂糖からどれくらいのCO2が発生するか計算します。
砂糖の主成分は二糖類であるスクロース(ショ糖)で、発酵過程では最初に単糖のブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)に分解され、その後エタノール(アルコール)とCO2に分解されます。
上記の流れをまとめて発酵過程を化学式で書くと
C12H22O11+H2O→4C2H5OH+4CO2
となり、1molのショ糖から4molのエタノールと4molのCO2が出ることがわかります。
砂糖の値段を520円/kg(Amazon時価参照)とします。細かい計算方法は省きますが以上の情報より、手作りCO2ボンベを使うとCO2を標準状態で1L発生させるのに必要なランニングコストは約2円と計算できます(詳細後述)。
圧倒的に手作りのペットボトルの発酵式CO2添加装置の方が市販のボンベに比べて安いです。おおよそ1/5のランニングコストでCO2を発生させることができます。
当然、初期費用の面でも発酵式CO2添加装置の方が有利です。
ただし、そのためにはペットボトルに投入した砂糖を使い切る必要があります。発酵式CO2添加装置で発酵が止まってしまう原因の多くはアルコール濃度の上昇です。おおよそアルコール濃度が10%を超えてくると発酵がストップするようです。よってすべての砂糖がアルコール発酵をしても濃度がそれを超えないようにする必要があります。
また、酒税法の問題もあります。日本では酒類の許可なき製造は法律で禁止されています。酒類の定義は以下の通りです。
「アルコール分1度以上の飲料」には、アルコール分1度以上のものでそのまま飲用に供し得るもののほか、水その他の物品を混和してそのアルコール分を薄めて飲料とすることができるもの(飲用に供し得る程度まで水その他の物品を混和したときのアルコール分が1度未満となるものを除く。)又は水その他の物品と併せて飲用に供することができるものを含むものとする。ただし、アルコール事業法(平成12年法律第36号。以下同じ。)第2条《定義》第4項に規定する特定アルコールを精製し又はアルコール分を90度未満に薄めたもので、明らかに飲料以外の用途に供されると認められるもの(当該物品を飲用に供することとしたものを除く。)については飲料に該当しないことに取り扱う。
国税局HP
発酵してできたアルコール液は濃度が1%以上の場合はエタノール溶液は酒税法に違反する可能性があります。ただ「明らかに飲料以外の用途に供されると認められるもの」は該当しないので、発酵式CO2添加装置は問題ないという解釈にもできます。
実際、とても飲める代物ではないと思いますし添加装置を使っているだけでは捕まることはないと思います。ただ法律の解釈次第では犯罪にもなりえます。きちんとやるならば、なんらかの方法で 「明らかに飲料以外の用途に供されると認められるもの」 になるような工夫をすべきです。
ここでは仮に市販ボンベと同量の約74g(37.6L)近いCO2を発生させ、かつ1%以下の濃度の収めることを考えたのが下の表、左端の計算結果です。
市販のCO2ボトルと同量のCO2を発生させるためには投入する砂糖は144g(大さじ16杯)必要です。またその時のアルコール濃度を1%以下にするためには水は約10L必要です。
一応、理論的にはこれだけ用意できれば酒税法も問題なく市販のCO2ボトル一本分=約1か月分のCO2を発生させることができます。
今回は大さじ一杯=砂糖9gで計算しています。
ただ実際作る際には、一般的には1.5L、もしくは500mLの炭酸ペットボトルを使うことになると思います。ペットボトルで簡単に作れコスパが良いのがコンセプトなのでそれ以上大きい容器は非現実的だと思います。
ペットボトル容量に合わせて1%濃度に収まるように調整したのが左から2列目、3列目の計算結果です。どちらも容量いっぱいまではいれないように調整しました。
1.5Lボトルの場合は合法でやるならば大さじ二杯程度が限度になります。4日に一回くらいは取り換える計算になります。500mLの容器を使った場合は大さじ0.5杯程度が限度でほぼ毎日取り換える計算になります。
最終アルコール濃度1% | 砂糖量 | 水量 |
1.5Lペットボトル | 大さじ2杯 | 1.35L |
500mLペットボトル | 大さじ0.5杯 | 300mL |
上記の範囲が確実に発酵式CO2添加を合法的にできるラインです。
もう一つ、酒税法に反しないように何らかの方法で発酵式CO2添加装置の溶液を「明らかに飲料以外の用途に供されると認められるもの」 とした場合を考えてみます。以下その前提で話を進めていきます。参考にする際は自己判断でお願いします。
その結果が上表右側の青いラインで囲った部分です。
色々なサイトを見ていると8%程度ならアルコール発酵は余裕で続くよつなので、そこを濃度のボーダーラインとします。
先の計算の通り、市販ボンベと同量の約74g(37.6L)近いCO2を発生させるには144gの砂糖が必要なので、全砂糖が消費された時のアルコール濃度を8%に抑えるには約1.2Lの水があればよいことがわかります。この量であれば1.5Lのペットボトルを使っても現実的に作成可能水量です。
同じように8%をボーダーとして計算を500mLのペットボトルで使える量を計算すると大さじ4杯程度の砂糖と水350mL程度が完全に発酵させ切って良い塩梅ではないかと思います。この場合、CO2発生量は10L程度なので、交換頻度は週1程度になります。
最終アルコール濃度8% | 砂糖量 | 水量 |
1.5Lペットボトル | 大さじ16杯 | 1.2L |
500mLペットボトル | 大さじ4.5杯 | 350mL |
以上が理論的に計算した、発酵式CO2添加装置にベストな砂糖の量と水の量です。これ以上、水に対する砂糖の割合を増やすとアルコール濃度が高くなりすぎて発酵が途中でストップする恐れがあります。
よく発酵式CO2の作り方を書いたブログで500mlペットボトルに砂糖を100gくらい突っ込んだりしてるのを見かけますが、恐らく無駄です。砂糖を使い切る前に発酵が止まってると思います。
ただ、この検討には大きな穴があります。発酵スピードが考慮に入れられていないことです。
いくらガスボンベ1ヶ月分のCO2を発生させることができたとしても、それに1ヶ月かかるとは限りません。もっと早いかもしれないし、遅いかもしれません。
遅い場合は良いのですが、発酵速度が早すぎるとCO2が多量に水槽に添加され、生物に悪影響を及ぼす恐れもあります。よって発酵速度のコントロールが必要です。
この資料の実験結果を参考にすると、発酵速度をコントロールできる要素は温度とアルコール濃度、糖濃度、イースト菌量です。これらを調整して、欲しいCO2供給時間に合わせる必要があります。
その要素も含めて考える発酵式CO2添加装置の作り方、管理維持方法は以下の通りです。
①大さじ8杯、水1.2LでCO2添加装置を作成。(2週間持たせる想定で量を決定。濃度を薄め反応速度を遅らせる方向から始める。発酵速度遅い方がリスクは小さく、早くするのは簡単なため)
②反応が終了したら1/2を捨てて大さじ4杯の砂糖、600mLの水を追加(アルコール濃度を半分に薄めて1週間分の砂糖を追加)
③②を毎週繰り返してメンテ
②で半分だけ捨てたのは、全部やりなおすより追加した方がラクだからです。
これを行うには①を2週間かけてできるように調整する必要があります。そうすれば③は一週間ごとのタイミングになり、ボンベ式のCO2と同量のペースで添加することができます。
発酵スピードが早すぎる場合は温度をコントロールするもしくは水量を増やす、イースト菌を減らすなどの方法が考えられます。逆に遅すぎる場合はイースト菌量を増やしたり、暖めたりという手段が考えられます。
この辺の感覚は季節(気温)にも影響されますし、実際にやってみて経験で調整していくしかなさそうです。
いずれにせよ1.5Lペットボトルの方が濃度の調節幅もあり、使い勝手は良さそうに思います。
せっかく計算したのでまた今度、自分でも作ってみたいと思います。
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